佐藤可士和展

1998年
当時中学三年生、受験生だった僕は吾妻橋にあった塾に行く前に千束商店街にあったCDショップに通っていた。
高校受験の時唯一の楽しみは音楽と夜中のニッポン放送だけ。友達に教えてもらったその店はCDを買うと、販促用のポスターをつけてくれるのが嬉しくて用もないのに行くこともあった。
その店の棚で見つけた”ATTACK FROM THE FAR EAST”という2本のライブビデオ。
ヘンテコなイラストが描いてあるのが一本と緑色の背景にモノクロの3人の男が写っているパッケージがもう一本。全て英語で書かれていて、曲名もわからないけど、トイズファクトリーからリリースされていると言うことはおそらく日本人なのだろう。ただ何故かわからないけどそのジャケットにすごく惹かれてその店に通うたびに何度もそのビデオテープを見て、受験が終わったらこれを絶対に見るんだって思っては棚に戻していた。

そうして受験が終わり、貯めていたお小遣いでジャケ買いということを初めてしたのがそのライブビデオだった。興奮しながら親の部屋にあったブラウン管のTVの前に座り、英語で歌う3人の日本人の映像を見て、TVの音楽とは違う本物に触れたような気がした。それが僕とHi-STANDARDとの出会いであり、佐藤可士和さんの作品に初めて触れた瞬間だ。MAKING THE ROADが出る3ヶ月前の話。

デザインに興味が湧いてきた大学生の頃、六本木のTSUTAYAで知ったふりをしてデザイン本やアートブックや写真集を読みに行くということを時々していた。ある時何かの本を読んでいると、その場所のロゴを作った人と、ハイスタンダードのANGRY FISTのジャケット、そしてあのビデオのジャケットをデザインした人が同じ人だということを知り、雷が走ったように運命的なものを感じた。
そこからユニクロを始め、セブンイレブンや楽天と、気づけば生活のすぐそばに可士和さんのデザインがあるようになるには時間はかからなかったけど、自分中ではずっとハイスタのセカンドアルバムをデザインした人というキーワードで何かが繋がっているような気がしていた。

一度だけ楽天の中途採用サイトを担当させてもらった時、取材に同席させてもらってお会いしたことがあるけど、オーラが凄くて声もかけられなかった。ただカバンの中には日本に優先順位という概念を広めたと思っている著書、「佐藤可士和の超整理術」を忍ばせておいた。
新美術館の広い空間、数々の有名な広告や巨大なVIの展示に紛れてケンくんのサイン付きのANGLY FISTのレコードが置かれているのを見た僕は、中三の自分と今が繋がった気がして涙が出そうになった。
同じものは全て所有してるし、何度も見たものではあるのだけど、あの時の気持ちが変わらないでそこにいたようで、そんな色々を思い出させてくれた時間でした。
展示の感想など何一つ書いてないけど、それでいいと思っています。

佐藤可士和展

02/14/2021

カテゴリー: Days