Craving for Distortion

緊急事態宣言下の渋谷でDYGLのライブを見た。

年始から始まった冬の自粛生活のせいで、そろそろディストーションを浴びないと気が狂いそうだった時に入ってきたライブの知らせ。当初は20時開始の予定だったので、これは子供をお風呂に入れてから行っても全然間に合うなと思い奥さんの許可どりをして、チケットを購入。
どっこい、緊急事態宣言が延長になり、ライブの開始時間も18:30からになった。きっと20時には完全に音止めをするんだろう。
とりあえず山手線に乗り渋谷へ向かう。ライブの前には、アプリで入荷を待っていたIKEAとLEGOのコラボ商品が渋谷には在庫があったので難なく購入。

この状況でのライブは僕のような単客が多いのかと思っていたけど、意外にもそうでもなく、普段通りマスクをしたまま友達とハングアウトしている人が結構多い。
外国の方もちらほら見かける。定員を50%以下に抑えたフロアは、床にガムテープで四角いマス目のグリッドが引かれていてその中に一人が収まっていくという感じで隣の客との距離が取られているので床に荷物を置くこともできる。ドリンクの引き換えも19時までのよう。

定刻通り、Let it outから緩やかにスタート。マスクをしたまま口ずさみ、首を振り、踊る。
秋山くんの言葉の一つ一つに自信があり、様々な場所への配慮があった。次のアルバムからの新曲もかなり多かったけど、どの曲も素晴らしい、何かがフックになればもっと爆発的に知名度が上がることもゆうに予想できる。日本武道館のステージに立てるくらいのポテンシャルは余裕であるし、僕自身それを見てみたい。

この前POP LIFEのポッドキャストを聞いていたら、かの鹿野淳さんは、”レミオロメン、お前らに賭けた”というコピーを書いたらしいが、今の僕には”DYGL、お前らに賭けた”という気持ちすらある。それくらい2021年のDYGLのライブは仕上がっている。

そんな轟音に包まれているとふと、自分はこの瞬間の為に東京に住み続けているのかもしれないと思った。
都市というのは誰かの目的で成り立っている。ほとんどは仕事か学校で、その合間にそれ以外の文化的なものに触れ、それが生きる力になって日々を回していく。そういうものに触れている方が自分は自分らしくいられると思ったのが高校生の頃だ。自然と寄り添うように暮らすより、自分には心地よいとも思うし、そういうものに触れていたいから、デザインを仕事にした。

近頃ではライブハウスから叩き上げられて有名になるようなバンドは少ないように思う。そもそもバンドを組まずに、PCひとつで作曲ができてしまうので、SSWという形態をとった方がフットワークも軽く売れやすい構造なのかもしれないけど、DTMでここまで心は揺さぶられない。
ディストーションには血が通っている。何かを成し遂げたい若者のギラギラとした意思を感じる。
それがもう古いとか言われる時代なのかもしれないけど、そんなことはどうでも良い。
自分の琴線が震えるかどうかの問題であって。

そんなことをつらつら考えながら箱を出ると、時短営業により路上でストロングゼロで何かを誤魔化す若者が沢山いる。
立ち飲み屋には入れないほど人が溢れている。それを横目見ながらTSUTAYAで本を二冊買い、お腹を空かせて銀座線に乗り帰路についた。

時代を切り裂くのはいつだってロックバンドのディストーションギターだ。
それをずっと信じている。

03/21/2021