20141125 DAY 5 – Versailles,BATACLAN –

5日目 ヴェルサイユ

前日に買ったクロワッサンやオレンジジュースを朝食に食べ、いそいそと準備。
最寄りのグルネルからメトロに乗り、セーヌ川のほとりにあるジャベルという駅で、Cラインに乗り換えてヴェルサイユ方面へ。


メトロとは異なるいかにも郊外に出る旅客用の車両に高揚しながら乗り込み30分ほどゆらゆら揺れてヴェルサイユに到着。

駅前のカフェでコーヒーを買い、馬車でも通りそうな壮観な並木道をコーヒーを飲みながら顔はめパネルで写真を撮ったりして浮かれて10分ほど歩いて行くと、ルイ14世騎馬像とご対面。その遥か向こうにものすごく馬鹿でかいヴェルサイユ宮殿が出現する。

黄金に輝く門をくぐるときも思い出すのはTake Away Phoenix。
フランス絶対王政の象徴的建造物として建てられた宮殿が、約300年経った今でも変わらない輝きを放っている。


鏡の回廊に入ると今まで体験したどの空間とも違う空気が流れていた。落ちてきたら死ぬのかなと思うほど巨大なシャンデリアがいくつもぶら下がり、仰々しい壁や天井の絵画はもちろん、テキスタイルで覆われた美しい家具やドアノブの装飾一つとっても、おそらく全てのパーツがこのために作られていることがわかる。豪華絢爛という言葉さえもチープになるほどに、煌びやかで細かな彩飾の一つ一つが、権威の象徴としての威厳を感じられる。当時の職人の技術やデザイン、哲学、クラフトが凝縮されているのが手に取るようにわかる。アジア系の団体客のうるさい声に邪魔をされながら、部屋に入るごとにその荘厳な一つ一つの描写に呆気にとられていた。

美しい噴水庭園を見に出てみると、ぐるぐるの唐草模様のように手入れされた緑と水平線の向こうまで続く噴水と水路、両側にはすっかり葉の落ちた森が広がっている。天気が良い夏に日になれば青い空と緑がもっと美しい調和を見せてくれるのは容易に想像できる。
外はめちゃくちゃ寒くて、思わず外の売店で暖かいコーヒーを買い、遥か遠くのその地平線を見つめながら、目をつぶるとcountdownのメロディが聞こえてくるようだった。
この辺りでPhoenixの4人が生まれたのだと思うと、あの4人から醸し出されるどのロックバンドよりも気品高い空気はここの出自によるものだと納得できる。今思うと観光用の馬車に乗って、もっと庭のエリアを探索すればよかったなとも思うけど、そんな気にもならないほど寒かった。

あまりの豪華さに呆気にとられた時間を過ごし、ヴェルサイユ宮殿を後にするともう昼食の時間はとうに過ぎていた。あまりの寒さに駅前のカフェに飛び込み、暖かいスープとサンドイッチを奥さんと感想を言い合いながら食べる。

PhoenixのLove like a sunsetという曲はヴェルサイユからパリに戻る道をスティーブ・ライヒを聴いていて影響を受けたというエピソードを思い出し、帰りの電車ではずっとライヒを聞き、車窓の両側に現われる森の樹々をぼんやりと眺めながらパリ市内に戻る。
まぁトマは車だから見えている景色少し違うのだけど、この森の中を中世の貴族も馬車で通っていたかと思うとなんとも優雅だ。

すっかり冷えた体を温めるためにアパルトマンで少し休むことに。1時間ほど昼寝をして休憩した後は、メトロで3区の北マレ方面へ。
サン・ポール駅で降りまずはラズ・ドュ・ファラフェルでファラフェルフードをテイクアウトして、早めの夜ご飯を食べる。野菜と肉がほどよく混ざっていてクリーミーなソースがとても美味しい。
この辺りはトレンドの発信場所としてファッションブランドを始め、多くのショップが軒を連ねている。

その後もレクレール・ドゥ・ジェニーで美しい色のマンゴーエクレアを食べ、個人的に昔から好きなSurface to airでTシャツを買い、FrenchTrottersなどを見て、

A・P・Cではこれからライブに行くというのに、日本では即完売だったNIKEとのコラボスニーカーを発見してしまい夫婦揃って即決購入。箱を捨てて靴を無理やりバッグに詰めて、そのまま北東側に歩くとヴォルテール通りとぶつかる角に今日のライブ会場であるバタクランがあった。

まだ前座のバンドが演奏中だったので隣のカフェで一杯飲んでから、初日にシャンゼリゼ通りのFnacのチケット売り場で購入したチケットを受付に渡して中に入る。日本でライブといえば基本コインロッカーに荷物を入れるのが定番だけどさすがはパリ、結婚式場のようにちゃんとコートや荷物を預けるクロークがあって、受付のお姉さんも笑顔で迎えてくれて安心して荷物を渡した。

フランスの歴史的建築物にも認定されるほどバタクランの歴史は古く1864年に建立されたそうだ。シノワズリを具現化したような奇妙な中国風の建物の中に入ると、2F席の赤い壁がぐるりとステージを囲み、天井が高いクラシックなダンスホールという感じの雰囲気。日本でいうと東京キネマ倶楽部にとても良く似ていて、入ってすぐに好きになった。

ドリンクを交換して、転換中のBGMをしばらく聴いていると本日の主役、イギリスのインディーロックバンド、Bombay Bicycle Clubが登場した。
バンドは当時、2014年の初頭に4th album「So Long, See You Tomorrow」をリリースし全英チャート一位を獲得、アルバムのツアーの真っ最中で脂が乗っている時期。2014年のフジロックにも出演していて日本での注目度は高い。
10年代のバンドらしくエレクトロニカやダンスミュージックにフォーキーなグッドメロディがセンス良く融合して、とてもよく聴いていたバンドなだけにこんな異国の地で観れることもとても嬉しかった。

アルバムと同様に「Overdone」のイントロが鳴り、ステージのバックには大きな5つの円形のオブジェクトが出現、そこにアルバムのアートワークの歩いている人のシルエットが回転する映像が映し出され、バンドのクールな世界観を演出する。ニューアルバムの曲を中心に、静かな曲と激しめの曲をバランスよく取り入れ「Luna」「Come to」「It’s Alright Now」「shuffle」「Feel」など代表曲を随所に織り交ぜるベストなセットリスト
何よりステッドマンのボーカルがとても心地よく、お酒が進む。アジア人はほぼ僕らしかいない中で見るライブは格別だった
朝からベルサイユを歩いて、とても疲れていたけれど結局アンコール最後の「Carry Me」まで堪能し大満足で外に出ると、外はさながら映画ミッドナイト・イン・パリのようなマレの街並み。とてもロマンチックで溶けそう。ほろ酔いで夜のメトロに少し緊張しながら乗り込み、ライブの余韻に浸り帰路につく。

一年後にこのバタクランであんなテロ事件が起きるとは、当然この時は思いもしなかった。

カテゴリー: Trip